マーレンは、1982年のイタリアでディレクターのマリオ・エスポジートと
デザインマネージャーのアントニオ・エスポジートの二人によって設立されました。
マーレンの万年筆をはじめとする筆記用具は、贅沢で独自性に富み、
「違いを生むためにデザインする」をスローガンに、アルチザンと呼ばれる
伝統的な手工芸を行う職人達が製作に取り組んでいます。
中でも数量限定のモデルは、名人クラスのアルチザンが、自らの人生の中で培ってきた手法を尊重し、
それを存分に生かすことで、オリジナリティあふれる高い芸術性を生み出しています。
たとえばウルティマ・セナは、ふっくらとした優美なシルエットの楕円に削り出されたステムに、
レオナルド・ダ・ビンチの名画、「最後の晩餐」が手描きでペイントされており、しかもそれが
独立して存在感を放つのではなく、ペン先からキャップに至るまで一体となって
ひとつの新しい美を生み出しています。
ミュージック・シリーズではあえてシンプルなデザインにしながら、
クリップ部分を非常に手の込んだ銀細工でサクソフォンやクラリネットの形にすることで、
音楽を愛する人へのメッセージ性を強く盛り込みつつ、遊び心が感じられる魅力的な一本になっています。
マーレンの万年筆の中でも異彩を放っているのが、サイケというモデルです。
神秘的なターコイズブルーの色彩のボディは、イタリアンレジンの塊から一本一本削り出して作られており、
クリップとトップには、925銀を使用。ペン先はイリジウム鋼と14金から選べます。
この基本的な情報だけでも、高品質なイタリア万年筆のエスプリが十分に感じられるものですが、
マーレンはここに独自の味付けをすることで、特別な一本に仕上げることに成功しています。
それは、心理学者のソニア・ロザリア・ペトロジーノがデザインに携わっているという点です。
波の鎮まった水面を連想させるボディに、座って瞑想する人がデザインされたキャップリング、
そして穏やかな輝きを放つ銀のクリップは、ペトロジーノがこの万年筆に込めた
Keep Calm and Be Cool(心に凪と冷静を)というメッセージをこの上なく表現しています。
たとえ心に怒りや悲しみが湧き起こったときでも、心が凪いだ状態を思い返すことが出来る習慣を持っている人は、
道を大きく踏み外すことはないでしょう。その習慣は、神社仏閣に訪れて、その空気に触れることであったり、
美しいクラシック音楽を聴くことであったり…人によって様々でしょうが、
書くという日常的な動作を行うことで自然と心が凪いだ状態を作り出してくれるのが、このサイケだといえます。
マーレンの30年の歴史のなかで生み出された万年筆はいつも、
その時代の文化的、歴史的、技術的、芸術的なムーブメントを積極的に取り入れてきました。
これもひとえに、マネージャーの二人を献身的なアルチザン達が支えた、チームとしての成果なのです。