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デルタ

  • 3月 06 / 2020
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デルタ


デルタは1982年、イタリアのパレーテで創設された、比較的新しい万年筆メーカーです。
パレーテはイタリアの南部、西海岸に面した場所に位置し、人口は1万人ほどの小さな自治体です。
地中海性の爽やかな気候と、古いキリスト教建築のコントラストが美しい、風光明媚な土地柄です。
美しい風景が、美しい万年筆を作る、まさにそんなことを実感することが出来ます。
この、ある意味時代から隔絶された楽園のような場所で、伝統的な手作業によるものづくりに
従事する職人「アルチザン」達によって、デルタの万年筆は生み出されているのです。

デルタの万年筆のデザインの特徴は、万年筆の持つトラディショナルで男性的な
イメージにとらわれすぎずに、女性的な柔らかな美しさをたたえているという点です。
例えばデルタの中でも人気のモデルであるドルチェ・ビータを例にとって見てみますと、
鮮やかなオレンジ色を大胆に使用し、しかも高貴さを損なっていない絶妙なものです。
世界をリードするイタリアのファッション業界に見られるような、ビビッドな色使いと
華やかさを持った万年筆はまさにデルタのお家芸ともいえるものであり、
快活で周囲に明るいムードを与えてくれる、聡明な女性の魅力を余すところなく引き出してくれます。
もちろん男性が使用した場合も、エネルギッシュで品のある好青年の印象を、ケレン味なく与えてくれるものです。
この、性差にとらわれずに美を追求するという姿勢は、イタリアの工芸品以外にはなかなか
みられないものであり、デルタの万年筆と同じくイタリアの職人によって作られる高級自転車、
デローザにも、私は同じ思想を感じ取ります。

実際に筆記用具を手に取り、文章を綴るという行為は、人を俗世間から離れた、深い精神世界へといざないます。
その精神世界とたわむれつつ、思いのままに文章を書いているうちに、
いつのまにか現実世界では何時間も経過しているというのはよくあることです。
この神秘性は、世界の先住少数民族が、火や音楽を使用して深い精神世界へと没入することにより、
自然と調和して生き抜くための知恵を得てきたやり方と通ずるところがあります。
デルタはそんな精神世界の先駆者たる、世界の少数民族に敬意を表し、それぞれの少数民族を育んできたその土地の自然や、
その自然からのインスピレーションの賜物である美しい意匠をあしらった、限定シリーズの
万年筆の製作、販売に取り組んでいます。そのなかには、北海道の先住民族であり、東北や中部地方にも
地名などにその文化の名残が見られる、アイヌをモチーフにしたモデルもあります。
多くの方が一度は目にしたことがあるであろうアイヌの伝統意匠、アイウシがキャップリングに
刻み込まれており、遠いイタリアの地で日本の先住民族が尊敬されていることに親近感を覚えます。

デルタの万年筆を愛用することは、即ち美と神秘の世界を探求する充実を
日常に組み入れることになるでしょう。


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