モンテグラッパは1912年、ブレンタ川を臨むロケーションに創立されました。
モンテグラッパを生んだイタリア、ビセンサ地方のバッサーノ・デル・グラッパは、
古くから金細工において高い技術を持つ職人が数多くいることで信望があります。
そして、その精巧な加工技術を万年筆のペン先作りに生かすのみならず、
美術の街ベネチアの育んだ神秘的かつ荘厳な装飾を万年筆のボディに施すことにより、
実用的な筆記用具と芸術作品が融合したイタリアン・ファウンテン・ペンのスタイルを
確立させたという点で、大きな功績があります。
金や銀にある、持つ者の自己評価を高め、感性を研ぎ澄まさせてくれるという効果は、
人とより接近した場所にあることでより強く働きますから、
指先と一体となる万年筆は、まさにうってつけであるといえます。
万年筆が仲介役となって、人と金細工、銀細工を引き合わせているというところに、
モンテグラッパの成功の秘訣があるように思います。
加工技術の高さと新素材への取り組みもモンテグラッパの特徴ですが、
たとえば金属製の胴軸の製造では、ディープ・ドローイングという、
胴軸の素材の銀や金を引き延ばしてから熱し、職人の手によって磨くという一連の工程により、
古代からバッサーノ・デル・グラッパに脈々と伝わる加工技術を、遺憾なく万年筆の製作に転化しています。
深い奥行きや細部の作り込みまでなされた装飾部分は、
彫刻家が原型を削り出し、それを元に鋳型を製作して金属を流し込むことで、
精緻なアクセサリーを製造するダイ・キャストの技法も取り入れています。
型からはずされた装飾が、職人の手によって磨き上げられ、魂が吹き込まれる様子は、
現代に生き残った伝統工芸の姿そのもので、思わずため息が出てしまいます。
金や銀を加工した造形美だけではなく、エナメリングによって描かれた
絵画そのものとしか言いようのないデザインもまた、万年筆の小さなボディを
ひとつの完結した世界のように生き生きとした生命力を感じさせるものにしています。
1930年代には、それまでは万年筆の素材としてはあまりなじみのなかったセルロイドとガラリスを、
いち早く採用した先進的なモデルを多数開発。モンテグラッパの新たな定番となり、
今もエンブレマやミヤといったモデルにその伝統が引き継がれています。
経営面でみますと、モンテグラッパは2000年11月にリッチモンドグループに加わりました。
世界のトップラグジュアリーグループの一員となったモンテグラッパは、
今まで以上に世界の美を愛する人達の手に渡っていくと思われます。
シルベスター・スタローンがブランドアイコンとなり、
過去にはアーネスト・ヘミングウェイも愛用したモンテグラッパの万年筆。
ランボーなどのタフな役柄で知られるスライや、自身も冒険をすることで文学作品の質を向上させようとした
ヘミングウェイのように、常に向上と自己研鑽を行う人の心を癒し、また次の仕事に向かわせる活力を
与えてくれるのがモンテグラッパの芸術的な万年筆なのでしょう。